第217章 犬がいなくなった

清掃員がゴミ袋を提げて出ていくとき、ドアがきちんと閉まっていなかった。

キャンディーの小さな身体が隙間からするりと抜け出し、次の瞬間には走り去って影も形もない。

夏目千尋の頭が、ぶわっと鳴った。

ここJ市ではこのところ、野良犬が虐殺されたというニュースが何件も出ている。

キャンディーはもともと臆病な野良犬で、普段だって見知らぬ人には近寄れない子だ。

千尋は車のキーと上着を掴み、靴もろくに履き直さないまま、適当に足を突っ込んで玄関を飛び出した。

「キャンディー! キャンディー!」

団地の植え込み、ゴミ置き場、地下駐車場――駆け回って、額から汗が噴き出す。声は枯れて、喉がひりついた...

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