第38章 彼女が持っていった

木村美弥の声は、やけに尖っていて、妙に細い。

「ねえ、隼人の隣にいるあの女、誰? あんなみすぼらしい格好で記念式典に来るとか、恥ずかしくないの? 三上隼人も見る目ないよね……」

その時の松本文子は、まともに取り合わなかった。

木村美弥も洗面所に出てきていた。スマホを耳と肩で挟んだまま、悪態をつきつつ、腕時計を外して洗面台の上に置き、手を洗う。

松本文子は、その時計をちらりと見た。

今季の新作だ。

そして――さっき入口で夏目千尋に真正面から言い返されたことを思い出し、腹の底の火が一気に燃え上がった。

松本文子の頭は回転する。

木村美弥は手を洗い終えると、そのまま電話を続けながら...

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