第61章 彼女の名義でコネを作る

帰る前に、夏目千尋はもう一度、母の墓前に腰を下ろした。

墓石の前に生えた雑草をきれいに抜き、刻まれた文字を丁寧に、何度も拭う。

「お母さん、そろそろ帰るね」

「時間ができたら、また会いに来る」

墓のそばの木が、さわり、と枝を揺らした。まるで返事をするみたいに。

千尋は小さく息を吐き、立ち上がって膝の土をぱんぱんと払うと、そのまま山を下りた。

麓に着いてから町をひと回りし、両手いっぱいに買い物をして、伯父さんの家へ向かう。

伯母さんは遠くから千尋の姿を見つけるなり、慌てて外へ出てきた。

「千尋、そんなに買ってどうするの!」

「伯母さん、明日には戻るの。会社がもうすぐ始まるから...

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