第187章

室内に響くのは、咀嚼音と新聞をめくる音、そして窓外から時折聞こえる鳥のさえずりだけだった。

朝食を終え、立花柚月は着替えのために二階へ上がった。

彼女が降りてくると、西園寺蓮はすでにスーツに着替え、玄関で彼女を待っていた。

「送るよ」

「悪いわ、自分で運転して……」

「ついでだ」

西園寺蓮は彼女の言葉を遮った。その口調は平坦だったが、拒絶を許さない響きがあった。

立花柚月はそれ以上固辞しなかった。

車は滑らかに市街地を走っていた。朝のラッシュアワーで車の流れは遅く、陽光が窓から差し込み、二人の間で揺れていた。

信号待ちで停車した時、西園寺蓮がふいに身を乗り出し、彼女のマフラ...

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