第190章

「ありがとうございます」

立花柚月は心からの謝意を伝えた。一条利明の助けがなければ、暗がりで待ち伏せていた強盗たちを一人で捌くのは、さすがに骨が折れただろう。

「礼には及ばないよ」

一条利明は穏やかな声で答えた。

「『おじ様』と呼んでくれるなら、私の娘も同然だ。助けるのは当たり前のことさ。……それにしても、あの日君が口ずさんでいた『きらきら星』、あれはわざとだったね?」

立花柚月は伏し目がちに、しかし口元には狡猾な笑みを浮かべた。

もちろん、わざとだ。

明言は避けたが、情報を小出しにすることで山口稔に疑念を抱かせ、彼自身の手で調べさせるほうが、自分が告げ口するよりも効果的だ。そ...

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