第246章

一条絵里は堂々と手を差し出したが、立花柚月が握り返そうとした瞬間、ぱっとその手を引っ込めた。

「ごめんなさいね」

一条絵里は少しすまなそうに笑った。

「ここへ来る途中、うっかり犬の糞を踏んじゃって。靴を拭いた時に少し手が汚れちゃったの。お手洗いはどこかしら? ちょっと洗ってくるわ」

立花柚月が方向を指し示す。

「あちらです。ご案内しますよ」

「いいの、一人で行けるから」

一条絵里は嵐のように慌ただしく、やって来て十秒も経たないうちに、くるりと背を向けて手洗いへと向かった。

立花柚月と日登未央は顔を見合わせた。二人の脳裏に、全く同じ考えがよぎる。

――一筋縄ではいかない相手だ...

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