第15章

小野詩織は言葉を失ったように固まり、唇を震わせた。

「澪、私じゃ……」

九条和也がその言葉を遮り、冷えた目で天城澪を睨みつける。

「もういい加減にしろ!」

「……いい加減に、ね」

天城澪は自嘲気味に笑った。

昔の彼は、本当に彼女に甘かった。

だからこそ、今の言葉が骨に刺さる。

「どうせ、初めてじゃないでしょ」

叔父とだって、ああいう噂を立てられた。

しかも今度は、院長までいるらしい。

――私って、どれだけ汚い女に見えるんだろう。

九条和也の胸の奥に、嫌悪がじわりと広がる。

それでも、天城澪と完全に切れる気にはなれない。

積み重ねてきた年数がある。

情がある。

...

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