第155章

だが次の瞬間、彼女はまた元の話に戻った。

「でも、このお見合いは……あなた、行きなさい!」

九条和也は苛立ったようにネクタイを乱暴に緩める。

「行かない」

冷たく言い捨て、踵を返して階段を上がっていった。

その背中を見送っても、高橋雅子は怒鳴らなかった。代わりに、目の奥で別の算段が動き出す。

この案件が九条和也の手に渡ってからというもの、彼は本社へ三日に一度は顔を出している。

だが、行くたびに――天城澪は決まって席を外していた。

――

平安京大内。

「天城さん、今日が修復の最終日です。ひととおり確認して、直すところがあれば指示をお願いします」

天城澪の隣に立つ鈴石誠士が...

ログインして続きを読む