第174章

山荘のプロジェクトはまだ続く。体調が優れないままでも、天城澪は朝早くから会社へ向かった。

車を降りる前、彼女は通知のないスマホを一度だけ見た。瞳の奥に小さな失望が走る。けれど、それはすぐに伏せたまつげの下へ隠された。

小野グループのエントランスに足を踏み入れた瞬間、天城澪は空気の違和感を嗅ぎ取る。

――見られている。

四方八方から視線が刺さる。意味の読めない目つきが混ざり、思わず眉が寄った。ひそひそ声もあちこちで立ち上がり、断片的に「愛人」だの、そんな単語が耳に引っかかる。

天城澪の目が、わずかに冷える。

「何をこそこそしてるんだ。仕事しなくていいのか!」

舟橋の叱責が飛んだ途...

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