第20章

小野隼人は、妹のためにわざわざ“場”を取り返しに来たらしい。天城澪を見る目には、あからさまな嘲りが宿っていた。

――たかが一社員のくせに、うちの妹を泣かせた?

そう言わんばかりの圧。

だが次の瞬間、澪はバッグから一通の書類を取り出し、彼の前へすっと差し出した。

「小野社長、こちらに目を通してから判断していただけますか」

余計な口論はしたくない。澪は昔から、言葉より“事実”で話すほうだった。

小野隼人は、その落ち着きにわずかに面食らう。瞳の陰りが、いっそう濃くなる。

――書類一枚で何が変わる。

鼻で笑いかけたが、澪の静かな視線に押されるように、結局ファイルを開いた。

そこにあ...

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