第45章

「奥様は、風邪をうつしたらいけないと……そうおっしゃっていました」

風邪をうつしたくない、だって?

それはきっと、天城澪が俺を避けるために用意した口実だ。

九条裕也は執事の言葉を聞き流し、そのまま二階へ上がった。

音を立てないようにドアを開ける。部屋の灯りはベッドサイドランプだけ。薄い琥珀色の光の中で、天城澪の小さな背中が布団にくるまっていた。こちらに背を向け、具合が悪いせいか、意識もぼんやりしている。

裕也はベッドの端に腰を下ろし、そっと手を伸ばして澪の額に触れた。

熱い。

発熱している。

眠りの中の澪は、額に触れるひんやりした感触に眉間のしわをほどき、ほっとしたように息を...

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