第60章

九条裕也と天城澪が帰宅すると、執事が真っ先に生姜湯を二杯、そっと差し出した。

「試合の準備はどうだ」

「まあまあ」

天城澪は生姜湯を口に運びながら答える。

九条裕也は執事からタオルを受け取り、澪の濡れた髪を拭いてやった。

「S級案件の進捗は」

「順調です。J市の案件よりずっと」

「もう一本、受ける気はあるか」

その言葉に、天城澪の手がぴたりと止まる。

訝しげに九条裕也を見上げた。

「あなたが私に振ってる案件だけでも十分多いです。これ以上増やしたら、社員さんたちがまた不満を言いますよ」

九条裕也は口元だけで笑う。

「今回は、今までとは違う」

「信じろ。お前が食いつく」...

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