第84章

「もう大丈夫だ。怖がらなくていい」

九条裕也は慌てて天城澪の手を握り、やわらかな声で宥めた。

その温かな大きな掌に包まれ、澪の肩から少しだけ力が抜ける。

「……私の車、どうなってたの?」

九条裕也の表情がすっと冷え、声の温度も落ちた。

「澪。先に聞かせてくれ。運転中、何があった」

澪は唇を噛み、震えを押し込むように言葉を絞り出す。

「病院を出て、少し走ったところで……ハンドルが利かなくなったの」

「止めようとしても、エンジンが切れなくて……それで、むちゃくちゃになって木に突っ込んだ」

視線を落とす。あのあと、意識がふっと遠のいて、そのまま眠りに落ちた。

たぶん、頭を打った...

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