第88章

「和也、高橋家の件は聞いたわ。最近、会社と病院を行ったり来たりで……きっと大変でしょう」

九条和也の目は血走り、唇の端に自嘲の笑みが浮かぶ。

「詩織……俺ってさ、ほんと役立たずだよな」

「高橋家があんなことになってんのに、俺、何ひとつ助けられない!」

九条和也は歯を食いしばり、握りしめた拳を床へ叩きつけた。

今回の一件は、嫌というほど突きつけてくる。高橋雅子がいなければ、自分は何者でもない――そういう現実を。

小野詩織は慌ててその拳を掴み、瞳に薄い涙を滲ませた。

「和也、あなたのせいじゃない。全部、あなたの叔父さんが悪いのよ!」

九条和也は唇を歪め、苦い色を瞳に沈める。

「...

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