第98章

彼女が言い終える前に、オフィスの床がひどい有様になっているのが目に入った。

散らばったガラス片。倒れたファイル。破かれた書類――まるで嵐でも通ったあとみたいだ。

九条和也は小野詩織に背を向けていたが、それでもわかる。いまの彼の機嫌は最悪だ。

詩織は唇をきゅっと結び、足元に気をつけながら近づいた。

「和也、どうしたの?」

ガラス片を跨いで、そっと肩に触れる。声はできるだけ柔らかく。

「誰かに何か言われたの? こんなに怒るなんて……」

振り向いた九条和也は、陰った顔をしていた。けれど相手が詩織だとわかった途端、ほんの少しだけ表情が緩む。

片手でこめかみを揉みながら、低い声で言った...

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