第293章

柳原詩織は信じられないという顔で七沢聡を見つめた。口をわずかに開けたまま固まり、やがて呆然と問いかける。

「聡……私のこと、もう愛してないの? 岡崎愛乃と一緒になって、まだどれだけの時間よ。どうして……私たちの何年もの気持ちに勝てるの?」

慌てふためき、助けを求めるように視線をさまよわせたあと、結局また聡の顔へ戻る。身を乗り出し、怖がるように彼の手を掴んで、震える声で言った。

「聡、そんなはずないよね……? 私のこと、まだ好きだよね?」

ずっと思っていた。七沢聡に関しては、何もかもが盤石だ、と。なのにどうして、いきなり崩れるのか。愛されなくなるなんて――受け入れられるはずがない。

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