第297章

七沢家の本宅はいま、ひどく冷え切っていた。老夫婦は次男のところへ行き、七沢竜也は伊藤優花の家へ移った。家に残っているのは七沢英子と七沢雅だけ。

今夜も、七沢雅はデートに出たきり帰ってこない。リビングで英子がテレビをつけたまま、うとうとと舟を漕いでいた。

七沢聡が帰宅すると、執事に目配せして使用人たちを下がらせ、自分は険しい顔のままソファに腰を下ろした。

英子が困ったように尋ねる。

「どうしたの? そんな不機嫌そうな顔して」

聡は眉を寄せ、母をじっと見た。目の前の気品ある女が、急に見知らぬ人間のように思えてくる。

「なによ、そんなに見て。何かあったの?」

「母さん。聞きたいことが...

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