希望

タヤ・クイン視点

ポータルは歪んだ水鏡のように揺らめいていて、正直に言わせてもらうと……こういうものが開くのを何度見ても、気味が悪いことには変わりない。

ズキが頭の中で鼻を鳴らした。『ただの魔法だ。平気だろ。呪文くらい見たことあるって顔をしな』

「あるっつーの、どうも」あたしは言い返し、隣でライレンが身じろぎするのに合わせて目を眇めた。彼は腕を組み、いかにもベータの色男といった風情で立っている。その顔は「修羅場をくぐってきたぜ」とでも言いたげな、いつものストイックな表情だったけれど、彼の頭の中ではアントンが檻の中の狼みたいに苛立たしく歩き回っているのが感じられた。

「次のグループが来るぞ」...

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