第54章 空中ハイジャック

夜は凪いでいた。木々の梢を撫でる風が、さらさらと乾いた音を立てるだけ。

セバスチャンは目の前の女を見据えた。冷えた眼差し。退かない意志。野心は隠す気すらないらしく、その輪郭が顔にくっきりと刻まれている。

その瞳の奥に、濃い所有欲が揺らいだ。同時に、好ましいと断じる露骨な賞賛も。

「いい」

セバスチャンはグラスを掲げる。

カツン、とガラスが触れ合い、澄んだ音が夜気を裂いた。

彼は一息に飲み干す。

「ヴァンスグループのリソースは全部、おまえが使え。足りないものがあるなら、遠慮なく持っていけ」

エヴァは赤ワインをひと口だけ含み、喉を鳴らして落とした。

金があるだけじゃない。話が早...

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