地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

三日月プリン · 連載中 · 308.4k 文字

478
トレンド
26.3k
閲覧数
1.2k
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

「救うのは妹の方だ。お前は強いから、生き残れるだろう」
十八年間、空気のように扱われ、誘拐事件の際にも迷わず切り捨てられた私。
「強さ」という名の言い訳で死の淵に追いやられた私は、地獄の果てで生き延びた。
そして今、全国民が見守る超人気リアリティショーの舞台に、私は「かつての復讐者」として舞い戻る。
家族が偽りの善人面を振りまく中、彼らの仮面を一枚ずつ剥ぎ取っていく最高のショウタイム。
そんな私を面白がり、盤面をひっくり返す男がいた。冷徹なるF1チャンピオン。彼だけは、私の冷酷な正義を肯定し、その権力で私を囲い込む。
さあ、復讐劇の始まりよ。私を「可哀想な犠牲者」だと思っていた報い、その身に刻ませてあげる。

チャプター 1

エヴァは誘拐された。義理の妹のアイヴィーと一緒に。

くそっ。この場所、鼻につくのは錆の臭いばかりだ。

手首に食い込むプラスチックの結束バンドは容赦なくきつい。息を吸うたび、埃と黴を肺の奥まで押し込まれるような気分になる。

背後で、アイヴィーがすすり泣いていた。

あれは悲劇のヒロイン気取りの泣き方だ。自分がどれだけ可哀想か、世界中に聞かせるための泣き声。

ちくしょう、こんな状況でも芝居を忘れないのか。

けれど、ここでは誰もそんな演技に付き合ってくれない。

無精髭だらけの誘拐犯が、いきなり振り向いた。毒づきながら重いブーツを持ち上げ、アイヴィーの腹を思いきり蹴りつける。

「黙れ、このクソビッチ! もう一回泣いてみろ、先に頭をぶち抜くぞ!」

次の瞬間、黒いSUVが3台、獣みたいに工場へ突っ込んできた。タイヤが耳をつんざく悲鳴を上げ、ヘッドライトの白が闇を引き裂く。

エヴァは目を細めた。

家族が来た。

ほんの一瞬だけ――忌々しい希望が毒蛇みたいに胸へ滑り込んでくる。

来てくれた。助けに来てくれたんだ。

逆光の中から、人影が現れる。

エイドリアン。兄。いつだってスーツを着崩さない男。妹を助けに来たというより、今から役員会に出るみたいな顔をしている。

エレノア。母。半ば取り乱していて、その視線はアイヴィーに釘付けだった。エヴァのことなど、一度も見ない。

ジュリアン。いつもの吐き気がするような優越感を纏って、まるで自分が監督した舞台でも鑑賞しているみたいに立っている。

そしてコール。顔色は死人みたいに真っ青で、エヴァとアイヴィーのあいだを視線が揺れていた。罪悪感に満ちた目。

ああ、昔わたしを失くした兄。せいぜい後ろめたく思っていればいい。

エヴァにはわかっていた。こいつらは自分を助けに来たんじゃない。

救いたいのはアイヴィーだ。

ウィットロック家で愛されて育ったのはアイヴィーであって、自分じゃない。彼らはエヴァを愛していないし、気にもかけていない。

けれど、予想外だったのは――リアムまで車から降りてきたことだ。

恋人のリアム。

彼の顔には、今まで見たこともないほどの恐怖が浮かんでいた。その表情だけで、心臓が一拍抜ける。目の奥が、じわりと熱くなる。

この忌々しい場所で、このどうしようもない世界で。

本当に自分を気にかけてくれるのは、リアムだけ。

「何が望みだ」

エイドリアンが口を開く。低い声が、がらんとした工場内に反響した。

「金だ!」

誘拐犯が唐突に銃を振り上げた。銃口をアイヴィーの頭に突きつけ、狂ったように怒鳴る。

「さもなきゃ誰も帰さねえ! こいつらの頭をぶち撒けてやる!」

「銃を下ろせ。望む額を言え!」

ジュリアンは一歩前へ踏み出した。その目には、人を見下すような、吐き気を催すほどの傲慢さが浮かんでいる。

「金なら問題ない。そんなものは最初から問題にならない。ウィットロック家に一番あるのは、金だからな」

「5000万ドルだ!」

誘拐犯が吠える。目の奥で欲望がぎらついていた。

「いいだろう」

ジュリアンは一瞬たりとも迷わなかった。

「1億でも構わない。人質を解放しろ。今すぐ口座を出せ」

静寂。

死んだみたいな静寂。

誘拐犯はジュリアンを見た。それから、張りつめた顔で並ぶスーツ姿の金持ちどもを見回し、ふいに鼻で笑う。

銃口でエヴァを指し、次にアイヴィーを指した。

「おまえらのお姫様が2人か。おめでてえおとぎ話みてえだな?」

黄ばんだ歯を見せて、にたりと笑う。

「じゃあ選べ。連れて帰れるのは1人だけだ。もう1人はここに置いていけ。俺が好きに遊んで、金の着金を確認したら、そっちも解放してやる」

空気が凍りついた。

エレノアの嗚咽がぴたりと止まる。口元を押さえ、目に浮かぶのは恐怖。けれど彼女が見ているのは、やっぱりアイヴィーだけ。いつだってそうだ。

「馬鹿げている!」

エイドリアンが言った。主導権を取り戻そうとする硬い声。

「そんな選択をするはずがない」

「なら、こいつから死ぬぞ!」

誘拐犯はいきなり銃口をアイヴィーへ向けた。

「だめ!」

エレノアが悲鳴を上げる。

「だめよ! その子じゃない! アイヴィーを行かせて、お願い、先にその子を! まだ子供なのよ!」

エヴァは鼻で笑った。口に突っ込まれた汚れた布のせいで、それは泣き声みたいな呻きにしかならない。

子供?

アイヴィーは自分より、たった1歳下なだけだ。

「それが最も理性的な判断だ」

ジュリアンまで同調した。毒を含んだような声音で。

「アイヴィーには……こういう状況は無理だ。エヴァとは違う」

エヴァにとって、こいつらがどちらを選ぶかなんてどうでもよかった。

視線はその向こう――リアムに釘付けだった。

お願い、リアム。

やめて。こいつらと同じにならないで。

昨夜のことが、脳裏を焼く。彼が自分を抱いた夜。指先が肌をなぞり、唇が耳元で囁いた言葉。

――エヴァ、おまえは俺のものだ。ずっと。

身体を押しつけてくる重み。匂い。彼が自分の中へ入り込んでくる感覚。

彼は言った。おまえは俺の世界の中心だ、と。

なら、今ここで証明しなさいよ。

リアムの唇が震える。泣き顔のアイヴィーを見て、それからエヴァへ視線を移す。

その目には、引き裂かれそうな苦しみがあった。

「リアム……!」

アイヴィーが、男の心を折るのが得意なあの声で、彼の名を呼ぶ。

コールが一歩前へ踏み出した。

「こんなの、だめだ――」

「コール!」

エイドリアンの鋭い一喝が飛ぶ。

「愚かな真似はするな」

リアムは目を閉じた。もう一度開いたとき、彼はエヴァを見なかった。

見ていたのは、誘拐犯だ。

「アイヴィーを行かせてくれ」

掠れた声だった。ほとんど聞こえないくらいに。

「エヴァは強い。……耐えられる」

強い。

その一言は、銃弾みたいに正確にエヴァの心臓を撃ち抜いた。

世界から、音も色も、一瞬で消える。

エレノアの叫びも、エイドリアンの指示も、誘拐犯の嘲るような笑い声も、全部が遠い雑音に変わった。

動いているのはリアムの唇だけ。

自分に死刑を言い渡した、その言葉だけがはっきり見えた。

強い、だって?

自分は強いから、見捨てられて当然。

自分は強いから、死んで当然。

自分は強いから、義理の娘のために場所を空けて当然――!!

胸の奥で、冷たくて見知らぬ力がせり上がる。

恐怖を呑み込み、失恋の痛みを呑み込み、残ったのは怒りだけ。

破滅的な怒りだった。

ふざけるな。

くたばれ、リアム。

くたばれ、ウィットロック家の人間ども。

エヴァはもう誰も見なかった。必死に手首を捩じり始める。結束バンドの縁を、背後の錆びた金属フレームの鋭い端へ擦りつけた。

自分で出る。自分の足で逃げる。

もし生きてここを出られたなら、全員に代償を払わせてやる。

たぶん、動きが大きすぎたのだろう。

その瞬間、場が崩れた。

刺激された誘拐犯が、狂った牛みたいに振り向く。

「どこへ行く気だ、このクズ女ァ?!」

怒号が工場に響き、時間がゆっくりになった気がした。

エヴァは見た。

男が銃を上げるのを。

引き金を絞るのを。

どん、と轟音が腹の底まで震わせる。

次の瞬間、焼けた鉄を押し当てられたみたいな激痛が、腹を貫いた。

エヴァは視線を落とす。

濃い色のTシャツの上で、血がみるみる広がっていく。

一瞬で力が抜け、身体が後ろへ倒れた。

最新チャプター

おすすめ 😍

社長秘書のヒミツ恋情

社長秘書のヒミツ恋情

17.4k 閲覧数 · 連載中 · 元知り
一夜の過ちから、彼女は社長の秘密の恋人になった。
借金を返すため、彼と交わしたのは一通の契約書。
「体だけの関係。恋愛感情は一切なし」——そう決めたはずだったが…
鬼畜社長が離婚後に豹変!?甘えん坊な元夫の執着愛

鬼畜社長が離婚後に豹変!?甘えん坊な元夫の執着愛

68.6k 閲覧数 · 連載中 · 鯨井
篠崎アエミが最も後悔したことは、すべてを捨てて榎田神也と秘密裏に結婚し、卑屈に彼の傍らにいて、自分自身を失ってしまったことだった。

初恋が帰国し、彼女は彼を要らないと言った。

離婚後、彼女は人生の頂点に立った。

トップレベルのデザイナー無憂は彼女だった。
トップクラスの名門が失った令嬢も彼女だった。
手のひらを返せば雲を作り、手のひらを返せば雨を降らせる株の神も彼女だった。
夫と息子に捨てられた私は、幸福という名の檻を抜け出すことにした

夫と息子に捨てられた私は、幸福という名の檻を抜け出すことにした

49.2k 閲覧数 · 連載中 · 白石 茉鈴​
嫁ぐ前は、夢見ていた。幸せな家庭を築けると信じていた。
しかし現実の結婚生活は、私を泥のような惨めな境遇へと引きずり落とした。
夫と息子にとって、私は愛人の飼い犬にさえ劣る存在でしかなかったのだ。
離婚届に淡々と署名する二人の姿を前に、私の心は不思議と静まり返った。
「そう、それでいいわ」
最後に乾いた笑みを浮かべ、私は決別を告げる。
今日で、私たちは正真正銘の赤の他人。
二百兆円の棚ぼた

二百兆円の棚ぼた

3.4k 閲覧数 · 連載中 · 文机硯
配達で生計を立てるダメ男、弓場風太郎は、彼女に裏切られ、御曹司に金で辱められた。

彼が絶望の淵にいるまさにその時、突然、思いもかけない横財、十兆円が舞い込んできた。

そこから、彼は逆転の人生を歩み始め、大富豪への道を邁進していく……
令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

891.6k 閲覧数 · 完結 · 蜜柑
天才陰陽師だった御影星奈は、かつて恋愛脳のどん底に落ち、愛する男のために七年もの間、辱めに耐え続けてきた。しかしついに、ある日はっと我に返る。
「瀬央千弥、離婚して」
周りの連中はこぞって彼女を嘲笑った。あの瀬央様がいなくなったら、御影星奈は惨めな人生を送るに決まっていると。
ところが実際は――
財閥の名家がこぞって彼女を賓客として招き入れ、トップ俳優や女優が熱狂的なファンに。さらに四人の、並々ならぬ経歴を持つ兄弟子たちまで現れて……。
実家の御影家は後悔し、養女を追い出してまで彼女を迎え入れようとする。
そして元夫も、悔恨の表情で彼女を見つめ、「許してくれ」と懇願してきた。
御影星奈は少し眉を上げ、冷笑いを浮かべて言った。
「今の私に、あなたたちが手が届くと思う?」
――もう、私とあなたたちは釣り合わないのよ!
御曹司に壊される人形

御曹司に壊される人形

23.3k 閲覧数 · 連載中 · キノコ屋
ある交通事故がきっかけで、僕は最愛の人に両足を折られ、監獄に閉じ込められた。

三年後、出所した僕の前に現れたのは、やはり彼だった。

「一生、逃がさないからな」

殺意に満ちた目で、彼はそう言った。

なのに、なぜか僕には、彼の心が深い悲しみに満ちているようにしか見えなかった。
再婚後、クズ元夫が私に土下座した

再婚後、クズ元夫が私に土下座した

51.5k 閲覧数 · 連載中 · ニワハナ
長きにわたって、彼女は半身不随となった夫を献身的に看病し、時に自らの身を危険に晒して治験薬の投与にも協力した。自らの健康を蝕まれながら、夫を死の淵から引き戻したのだ。

しかし、夫がついに自力で立ち上がれるほど回復したその日、彼は初恋の女性を腕に抱き、こう言い放った。
「これからの人生、俺は彼女と、彼女のお腹の子を守っていく」

打ちのめされた彼女が離婚を切り出すと、夫は冷徹に彼女の口座をすべて凍結し、無一文のまま家から追い出し、嘲笑うように吐き捨てた。
「俺がいなければ、お前には何の価値もない」

彼女が妊娠検査薬をそっと隠し持ち、すべてに別れを告げて永遠に立ち去るまで、夫が慌てふためくことはなかった——。
妊娠を隠して離婚します

妊娠を隠して離婚します

38.3k 閲覧数 · 連載中 · ユイ
「絢香、俺から逃げられるとでも思うな!」
九条雅人は彼女の顎を荒々しく掴み、低く唸った。

絢香の頬は屈辱と興奮で真紅に染まったが、その声にはまだ意地が残っていた。「あなたこそ、私に執着しているだけじゃないの?」

雅人は冷酷に鼻で笑った。
「離婚してからどれほど経った? それでもう俺の『ルール』を忘れたか。お前の身体は、今でも俺をこんなによく覚えているくせに。……ほら、咥えろ」

熱を帯び、恐ろしいほどに猛り狂った彼の太いものが、絢香の顔を容赦なく叩いた。

雅人は冷たく笑う。
「俺から離れられるなんて夢にも思うな、絢香。お前は俺だけのものだ」

——

3年間の契約結婚の間、霧島絢香は「雅人が冷徹な人間だから、その心を溶かすことができないのだ」と思い込んでいた。
しかし、彼が桜井陽菜の妊婦健診に付き添い、彼女が少しでも不快な思いをしないよう、見たこともないほどの優しさと甘やかし方で接している姿を目撃したとき、絢香はついに悟った。彼は人を愛せないのではない。ただ、自分を愛していなかっただけなのだと。

絢香は静かに離婚届にサインし、自身の「妊娠診断書」を胸に抱いて彼の元を去った。

だが、絢香が完全に姿を消した瞬間、雅人は狂わんばかりになり、街中を血眼になって彼女を捜し回った。

ついに再会を果たしたとき、雅人の瞳は血走り、その声は掠れていた。
「絢香、俺が悪かった……頼む、俺の元に戻ってきてくれ」
溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

376.6k 閲覧数 · 連載中 · 朝霧祈
原口家に取り違えられた本物のお嬢様・原田麻友は、ようやく本家の原田家に戻された。
──が、彼女は社交界に背を向け、「配信者」として自由気ままに活動を始める。
江城市の上流社会はこぞって彼女の失敗を待ち構えていた。
だが、待てど暮らせど笑い話は聞こえてこない。
代わりに、次々と大物たちが彼女の配信に押しかけてくるのだった。
「マスター、俺の命を救ってくれ!」──某財閥の若社長
「マスター、厄介な女運を断ち切って!」──人気俳優
「マスター、研究所の風水を見てほしい!」──天才科学者
そして、ひときわ怪しい声が囁く。
「……まゆ、俺の嫁だろ? ギュってさせろ。」
視聴者たち:「なんであの人だけ扱いが違うの!?」
原田麻友:「……私も知りたいわ。」
長年の結婚生活を終わらせたら、夫と息子が泣きついてきた

長年の結婚生活を終わらせたら、夫と息子が泣きついてきた

13.7k 閲覧数 · 連載中 · 白石 茉鈴​
長年の婚姻生活の中で、夫と息子の目に映る私は、ただの「最大の恥」でしかなかった。

あの女のために、何度も私を置き去りにした二人。そして今回の件で、私はようやく完全に目が覚めた。

彼らは、私の愛を受け取るに値しない。

だから私は、正式に離婚協議書を差し出した。
すると、あろうことかこの二人は、声を揃えてこう言ったのだ。
――本当に深く愛していたのは、私の方だった、と。

ふん、今さら一体、何の真似のつもりかしら。
私が去った日

私が去った日

13.7k 閲覧数 · 連載中 · バラへの愛
七年間、私は完璧な妻を演じ続けてきた。

けれど最後に彼が選んだのは、私ではなく、彼の初恋の女性だった。

夫は、私の心を深く傷つけただけではない。あの女が私の大切なジュエリーデザインを盗むことを許し、さらには実の息子までも操って、私を「怪物」だと思わせた。

嘘で塗り固められた結婚生活の中で、私は少しずつ自分を失っていった。

息が詰まるような日々。愛されていると思い込んでいた時間。すべてが偽りだった。

けれど、彼らはひとつだけ間違えた。

私を、もう戻れないところまで追い詰めたこと。

私が去ると決めたあの日。

私は、最低な夫も、母親への感謝を忘れた息子も、そして彼らによって壊された過去の自分も、すべて置き去りにした。

親友の支え。そして、私の本当の価値を見抜き、才能を認めてくれたある若き実業家との出会い。

その温かな手によって、私はもう一度、自分自身を取り戻した。

失った誇りを取り戻し、眠っていた才能を開花させ、世界へ羽ばたくデザイナーとして新たな人生を歩み始めた。

今、私の作品は世界の舞台で輝いている。

一方で、かつて私を捨てた男は、跪いて許しを乞う。

「戻ってきてくれ」と。

けれど、もう遅い。

私が去ったあの日こそが、私が本当の自分を取り戻した日。

もう二度と、過去には戻らない。
天才デザイナーの私と三つ子を、大富豪は取り戻したい

天才デザイナーの私と三つ子を、大富豪は取り戻したい

64.4k 閲覧数 · 連載中 · 月岛澪
実の父親と継妹にハメられ、私は瀧本知暁と一夜の過ちを強制された。
屈辱に塗れ、身一つで夜逃げするように国を去った私は、その後に彼の「三つ子」を身ごもっていることに気づく。

――6年後。
私は世界に名を馳せる天才デザイナーとなり、奪われたすべてを取り戻すために帰国した。
しかし、悪辣な嘘に目を曇らされた知暁は、私を激しく憎み、「仇敵」として冷酷に立ちはだかる。

やがてすべての真実が白日の下に晒された時、彼は己の過ちに絶望し、プライドを捨てて泣きながら私に許しを乞うた。
だが、傷つけられた私の心はもう戻らない。私は彼の懇願を、冷徹に突き放した。

――もう遅いわ。あなたを一生、許すつもりはない。

そう誓ったはずの私だったが、予想だにしない誤算があった。
私たちが産んだ愛らしい三つ子たちが、今さら戻りたいと泣く父親の、まさかの最強の味方として動き出したのだから。