第35章

寝室。

ヒルズが床の真ん中に立ち、「洗うか?」と訊いた。

椅子に腰掛けたジェイスは気まずそうにヒルを見上げる。

「……出てくるとき、洗った」

ヒルズは見下ろしたまま眉を上げ、探るような視線を向けてくる。

視線が空中でぶつかった。

一・五メートルほどの距離。それでも、ヒルの鍛え上げられた身体から立ちのぼる熱が、ゆらりと室内に滲み出して、周囲の空気までじりじりと温める。

ジェイスの目に、いくつもの味が混ざった。

自分の瞳に滲んだものが「哀しみ」だと気づいた瞬間、彼は俯いて視線を引っ込める。

数秒の間。部屋はしんと静まり返った。

ジェイスは立ち上がり、上着に手をかける。

ヒル...

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