第65章

海辺。月明かりはなくても、アランはあの男を見つけた。

ネロはひとり、岩礁のそばにいた。

「ネロ」

背後から、身を低くして呼ぶ。

声に気づいたネロが立ち上がり、顔を上げたときには、アランはもう隣に立っていた。

ネロが、気づかれない程度に一歩引く。

「昼のこと……悪かった」

アランが一歩詰め、真っすぐに言う。

静まり返った海辺には、二人しかいない。

アランの身体は相変わらず磁石みたいにネロを引き寄せる。近くにいるだけで、熱が伝わってくる。

――もう触らない。

耳の奥で、その言葉がよみがえる。ネロはさらに一歩、後ろへ退いた。

アランがその変化に気づき、わずかに目を見開く。

...

ログインして続きを読む