第9章

夜明けの通りを、車が音もなく流していく。二度、三度と遠回りし、ある一軒家の前で停まった。運転席の男が降り、ためらうように電子ロックへ指を置く。胸の奥がざわつくほどの間のあと――カチャリ。扉が開いた。

どれほど経ったのか。

アランは朦朧とした意識の底から引き上げられるように目を覚ました。

家具の輪郭が、じわじわと浮かび上がってくる。ここは……どこだ?

自分はベッドに寝かされていた。手足を動かすと、額と身体のあちこちに薬液の匂いと、ガーゼの感触がある。

「目が覚めた?」

近づいてきた誰かが、穏やかに言った。

アランは目を凝らす。

「俺だよ。ジェイス」

男が微笑む。

――ネロ。...

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