第11章

多摩丘陵の墓地は静まり返っていた。桜が音もなく舞い落ち、まるで淡いピンク色の涙のように、墓石を優しく濡らしていく。

私は隆くんのご両親の墓前に立ち、深く、深く頭を下げた。振り返り、少し離れた場所に立つ彼に小声で告げる。

「隆くん。少しだけ、一人にしてくれる?」

彼は黙って頷き、視界には入るが声は届かない、絶妙な距離まで下がってくれた。私は再び墓石に向き直り、化学療法の副作用で痩せ細った背筋を、それでも精一杯ぴんと伸ばす。

「はじめまして、お義父さん、お義母さん。……今の私、少し見苦しいですよね」

私は自嘲するように、つるりとした頭皮を撫でた。

「抗がん剤治療の前は、私、も...

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