第6章

 見たくなかった。いっそ、このまま窓から投げ捨ててしまいたい。

 けれど、部屋に残る弥介の残り香――シダーウッドのコロンの匂いが、私を嘲笑っているようだった。『お前は誰を信じる?』と。

 私はUSBメモリをノートパソコンに荒々しく突き刺した。

 画面に一つのフォルダがポップアップする。『Project: Scent Trap』。

 胃のあたりがずしりと重くなる。最初のPDFを開く。それはメールの履歴だった。ただの履歴ではない――和臣のプライベートアドレスから、『スターリング・コープ』の副社長に宛てられたものだ。私たちの、最大の競合相手である。

 息を呑んだ。

 スクロールする。写...

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