第26章 罠にかかる

ここは、彼女が想像していた以上に人里離れていた。窓ガラスにはぶ厚い埃がこびりつき、空気には錆と黴の臭いが淀んでいる。御華の華やかで洗練されたオフィス環境とは、あまりにも不釣り合いだった。

応対に出た職員は、どこか引きつった笑みを浮かべたまま、彼女を長机の脇へ案内する。

「片瀬デザイナー、どうぞこちらへ。岡野さん、急なお電話が入ってしまって。もうすぐお見えになります」

片瀬澄乃は小さく頷き、さりげなく周囲へ視線を走らせた。

机の上には空のガラスコップがひとつと、未開封のミネラルウォーターが一本。壁際では古びたエアコンの室外機がぶうん、と低く唸っている。目につく限りでは、それ以外に不審な...

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