第35章 騒ぎを起こす

片瀬結希は今にも泣き出しそうな顔で、瀧本知暁の袖を掴んだ。

「知暁、見てよ……これ……」

瀧本知暁はその手を鬱陶しげに振り払い、ぐちゃぐちゃに掻き回されたホールをひと渡り見回した。視線の先は、やがてエレベーター前で止まる。そこは、がらんとしていた。片瀬澄乃は最後まで姿を見せない。

胸の奥で、理由の分からない苛立ちがぼっと燃え上がる。

あの女、いったい何をしている?

御華のことは誰より気にかけていたはずだろう。こんな連中に台無しにされかけているのに、顔も出さずに隠れているつもりか。

だが、すぐに別の考えがよぎった。

片瀬澄乃は、土壇場で逃げるような性格じゃない。あえて出てこないま...

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