第37章 不倫相手に贈る

楠田昭一は譲渡契約書を握りしめたまま、両手の震えを止められなかった。六年前から胸につかえていた疑念に、ついに答えが出たのだ。御華はとっくの昔に、大川沙織――あの不倫相手の名義に移されていた。

屈辱だった。

一刻も置かず、楠田昭一はその契約書を持って片瀬澄乃のもとへ向かった。

「お嬢様、これを……」

片瀬澄乃は書類を受け取り、そこに記された内容を見た瞬間、全身の血が一気に煮え立つのを感じた。ぐしゃり、と契約書を握り潰す。紙は皺だらけになり、その瞳には抑えきれない怒気が燃え上がっていた。

「大川沙織……片瀬大介……」

二つの名前が、歯の隙間から絞り出される。

片瀬家の別荘へ向かう前...

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