第8章 レイ

声につられて、その場の全員が振り向いた。

そこにいたのは、仕立てのいい白のスーツを端正に着こなし、金縁の眼鏡をかけた女。隙のないメイクに、眉間には仕事人らしい冷ややかな距離感。J市のデザイン業界で幅広い人脈を持つ、リリその人だった。

リリは業界でも、容赦のない審美眼と強引な手腕で知られている。とりわけ海外ルートとの橋渡しに長けていて、彼女を通さなければ話にならないブランドも少なくない。

入口の人物に気づいた片瀬結希は、すぐさま片瀬澄乃から手を離した。表情を整え、愛想のいい笑みを浮かべて歩み寄る。

「リリさん、いらしたんですね。オフィスでお話ししませんか」

今日、片瀬結希がリリを呼ん...

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