第4章
駆け寄る足音。一人ではない――十数人、それも迅速かつ統制の取れた動きだ。誰もが有無を言わさず黙らせるような、そんな響きだった。
廊下の空気を切り裂くように、冷徹で絶対的な声が響き渡る。
「長谷川の人間に指一本でも触れてみろ。ただで済むと思うな」
それは、問いかけなどではなかった。
黒服の男たちが壁となり、廊下の両端を完全に封鎖した。私を取り押さえていた警備員が凍りつく。注射器を握った咲良の手が、中空で止まった。
その中央を、一人の男が歩いてくる。長身に、切れ長の鋭い目元。高級車よりも高価そうなスーツを身に纏っている。順平。私の兄だ。そして、長谷川グループの当主でもある。
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