第10章 彼は水原美月を受け入れられない

彼女は、三年近い青春を注ぎ込んで――ようやく一つの事実を見抜いた。

どれほど尽くしても、風間悠希は七海を振り向かない。

必死に彼を立たせたのに、得をしたのは別の誰か――。

……馬鹿みたい。

七海は自嘲気味に口元を歪めた。冷水に包まれる身体。少しずつ冴えていく意識。薄れていく薬の熱。

もう、誰にも縋らない。自力で生きる。

そう決めると、奥歯を噛み締め、身体を起こした。ぬめる岸へ、這うように。指先で泥を掴み、息を切らしながら――一歩ずつ、陸へ上がる。

サーキットの医務室で待つ気はなかった。七海は廃車同然のレーシングカーに乗り込み、いちばん近い病院へとハンドルを切った。

人けの少な...

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