第12章 それなら通報しよう

名取賢次は眉をひそめ、低い声で宥めた。

「泣くな。ゆっくり思い出して。きっと見つかる」

「今日、家を出てそのままここに来たの。途中で会ったのは清水秘書だけ……」

温井有紗はしゃくりあげながら、恐る恐る清水若菜を見た。口ぶりは無垢を装っているのに、言葉の刃だけが彼女へ向いている。

「まさか……清水秘書が盗んだなんてこと、ないよね? 私、清水秘書の人柄は信じてる。そんなことする人じゃないって」

そして、最後のひと押し。

「でも、あの指輪は私にとって本当に大切なの。清水秘書の潔白を証明するためにも……あなたのバッグ、見せてもらえない?」

名取賢次の視線が、瞬時に清水若菜へ落ちた。瞳の...

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