第25章 やはり彼女を置き去りにした

名取賢次は眉をひそめた。

「いったい、どういうことだ」

「昨夜、有紗が買い物から帰ってきたところを、地下駐車場でいきなり殴られたのよ。相手、手加減なんてまるでなくて……髪をつかんで、頭を壁に何度も打ちつけたの。あの子、その場で血まみれになって、そのまま意識を失ったのよ……!」

温井水月は息も継げないほど泣きじゃくりながら、電話口で必死に縋りついてくる。

「賢次、わかってるわ。当時、私たちがあなたを裏切るような真似をしたこと、本当に申し訳ないと思ってる。でも、どうしても言えない事情があったのよ……! あの頃、有紗はあなたを捨てて出ていったわけじゃないの。脳に腫瘍が見つかって、いつ命を落...

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