第32章 彼の揺れ動く心

名取星美は自嘲するようにふっと笑った。けれど、その目はみるみる冷えていく。

「でも今になって思えば、子どもだったとか、そんな話じゃなかったのよ。あの人、最初からわざとだったんだわ」

「昔ね、私がお兄ちゃんと仲よくしてるのが気に入らなかったの。自分の邪魔になるって思って、私を目の敵にしてた。でも後になって、私はただの妹でしかなくて、自分の相手じゃないってわかったら、今度は何もしなくなったのよ」

「だけど今は――」

そこまで言って、名取星美は痛ましげに清水若菜を見た。

「義姉さん。今あの人は、その意地の悪さを全部あなたに向けてる。だって義姉さんは名取夫人で、お兄ちゃんを取り戻すうえで、...

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