第44章 あなたはもう名取家にふさわしくない

清水若菜はその言葉を聞き、黙って唇を噛んだ。

――もちろん、名取賢次を愛している。

何度も何度も、自分に言い聞かせた。目を覚ませ。この男のために、もう一滴だって涙を流す価値なんてない、と。

それでも、近づくたびに胸は勝手にやわらかくなる。

けれど今日、休憩室で名取浩史が口にした言葉を思い返すと、「愛してる」なんて口にすること自体が、ひどく無意味に思えた。

清水若菜は手を上げ、名取賢次の手の甲にそっと重ねる。力を込めるでもなく、ただ静かに、彼の手を自分から離した。

「酔ってるのよ」

小さく息を吐き、淡い疲れを含んだ声で続ける。

「もう休んで」

それだけ言うと、彼女は彼を見なか...

ログインして続きを読む