第7章
もう二度と、マルクの名を耳にすることはないと思っていた。
ある日のこと、父に書斎へ呼び出されるまでは。
父は眉を寄せ、何かを躊躇っていた。冷徹な決断力で知られるシチリアの「ドン」にしては、極めて珍しい表情だった。
「パパ?」
訝しげに振り返り、私は父の顔を覗き込んだ。
父は一つ溜息をつくと、何か重い決断を下したように口を開いた。
「エリンナ。本来なら、こんなものは燃やしてしまうつもりだった。お前に知らせたくはなかったんだ。あのクソ野郎がお前を探して発狂したなんて聞かせれば、お前が情にほだされてしまうんじゃないかと危惧していたからな」
彼は言葉を切り、その眼差しは鋭く...
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