第5章
由美視点
手入れの行き届いた生け垣が続く私道を、黒いセダンが滑るように進んでいく。私は助手席に座り、窓の外でヴィクトリア様式の屋敷がどんどん大きくなっていくのを見ていた。三階建て。十七の部屋。そして白桜県の田園地帯に広がる二百エーカーの敷地。
亮の手が、私の手に重なる。「緊張してる?」
私は頷く。「だって……あなたのご家族と感謝祭を過ごすなんて。すごく大きなことだもの」
「この屋敷には前にも来たことがあるだろう」
「契約妻として、ですけど」私は唇を噛む。「今回は、なんだか違う感じがして」
彼が親指で私の手のひらに円を描く。「違うよ」
ダイニングルームは、磨き上げられた...
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