第6章
私はバルコニーに立ち、手すりを強く握りしめながら、東京の華やかな夜景を見下ろしていた。
かつて、この街は私にとって希望と夢に満ち溢れていた。だが今となっては、ただの牢獄の延長に過ぎない。
「藤原さん、一つ、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
藤原圭志はちょうどキッチンから水を一杯持ってきたところで、私の声を聞くとわずかに眉をひそめた。彼は最近、時折この青松庭園マンションにやって来るが、その度に何か義務を果たしに来たかのようで、気遣いから来るものではなかった。
「何だ?」
彼の口調には苛立ちが滲んでいた。
私は息を深く吸い込み、出来る限り平静を装って尋ねた。
「神崎凛と...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
縮小
拡大
