第14章

松本彩世は車のドアを閉めても、すぐには立ち去らなかった。

縁石のそばに立ったまま、冷たい風に薄いスカートの裾をさらわれながら、運転席の男を冷えた目で見つめる。

半分まで下ろされた窓の向こうで、新谷寒季は待ちきれないとでもいうようにスマホを滑らせ、着信を取った。

静まり返った夜道に、受話口の向こうの甘ったるく、それでいて恨みがましい松本凛の声がかすかに漏れる。

「寒季ぃ、なんでやっと出てくれたの? わたし、お腹がすっごく痛くて……」

新谷寒季はわずかに眉を寄せた。だが声は、無意識のうちに低く抑えられている。

「さっきまで運転してたんだ。彩世が隣にいた」

松本彩世の名を聞いた瞬間、...

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