第48章

連絡がつかないなら――それは、むしろ好都合だった。

松本彩世は一秒も迷わず踵を返し、そのまま階段を上がる。

着替えの最低限だけをスーツケースに押し込み、ベッドサイドのパスポートを掴むと、手早く海市行きの最短便を取った。

二時間後。

空港のVIPラウンジで、彩世は立花千時と合流した。

深夜便は帝都の重たい夜気を突き破り、雲の上へ駆け上がる。

胸焼けするような算段も、吐き気のする嘘も――全部、背後に置き去りにして。

数時間のフライトを経て、機体は海市空港へ静かに降り立った。

妊娠初期の身体は無理が利かない。

二人は千時が手配したホテルで一日休み、体を落ち着かせた。

翌朝。海市...

ログインして続きを読む