第55章

「黙れ!」

新谷寒季には、もはや機嫌を取ってやる余裕などなかった。声を潜めたまま、苛立ちを隠さず怒鳴りつける。

「さっきがどれだけ危なかったか分かってるのか? 彩世に見つかってたら、俺たちは終わりだったんだぞ!」

松本凛の目から、たまっていた涙が一気にあふれ出した。悔しさに唇を震わせながら、泣き声で訴える。

「怒鳴るの? あの女には外で何千万も使っておいて、私はこんな息も詰まるような試着室に一人で押し込められて、息すら殺してなきゃいけなかったのに! 私って何なのよ!」

「もういい、騒ぐな!」

新谷寒季は苛立たしげに遮った。

「彩世はまだ遠くへ行ってない。今すぐ服を着替えて、さっ...

ログインして続きを読む