第5章

来るべきものは、必ずやってくる。

私は認めた。

「楠木剛志を殺したのは、私です」

田原警部はペンを動かす手を止め、額に汗を滲ませた。その表情は、見る者をぞっとさせるほどに複雑だった。

私は虚ろに顔を上げ、嗄れた声で言った。

「妹の雫は何も知りません。彼女は鬱病を患っていますから、どうかそっとしておいてあげてください」

取調室の蛍光灯がブーンと唸りを上げ、私の顔を紙のように白く照らし出す。

田原警部は複雑な面持ちのまま、ゆっくりと口を開いた。

「椿野栞さん、本当にそれでいいんですね?」

私は力強く頷き、両手を固く握りしめた。

「雫は家で受験勉強をしています。あ...

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