第104章

妃那視点:

私は朱司の顔を、穴があくほどじっと見つめていた。

一瞬たりとも、その表情の揺れを見逃したくなかった。

朱司は固く唇を結び、こちらを見る目に深い同情をにじませる。

「そうだよ」

彼はきっぱりと言い切った。

「本当のことを話す前に、まず謝らなきゃいけない。あの誘拐事件の内情は、偶然耳に入ったんだ。でもその時、俺は祈葉と付き合っててさ。あの子も当時は、ただの何も知らない小さな女の子だった。そう思うとどうしても言い出せなくて……結局、隠す方を選んだ。悪かったよ、あの時は俺にも私情があった」

「じゃあ、どうして今になって話そうと思ったの?」私は問う。

朱司は後ろめたそうな顔...

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