第32章

金彦視点:

信じられない。

妃那が、ほかの男と結婚したなんて――ありえない。

「そんなわけないだろ」

首を振りながら否定しつつも、目の前の男をじろじろと眺めてしまう。

背が高く、すらりとした体に、服の上からでも分かる鍛え上げられた筋肉。堂々とした立ち姿は、まるで百獣の王みたいだ。

……認めざるを得ない。確かに、イケメンではある。

けど、こいつが妃那の夫? 旦那?

ない。

そう考えた瞬間、胸の奥でざわざわと動揺が膨れ上がった。

「妃那、その冗談は笑えない」俺は真顔で妃那を見て言う。「どれだけ嫌なことがあったとしても、こんな嘘だけは言っちゃダメだ」

妃那はその男の腕に自分の...

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