第69章

妃那視点:

祈葉がとうとう不幸に見舞われた。胸の底から嬉しくてたまらない。

あの女がこの家に転がり込んで来てからというもの、私の「楽しい」はあいつにごっそり奪われてきた。

でも今日は違う。今日は、私にとっては正月みたいな日。こんなに機嫌がいいのなんて、いつ以来だろう。

劇場に来た目的ももう果たしたし、これ以上ここにいる理由もない。

私は葉夜の腕に手を絡めて尋ねた。

「そろそろ帰ろっか?」

その瞬間だった。一郎が突然、狂ったみたいな勢いで私の前へ飛び込んできて、思いきり平手を振り抜いた。

あまりにも走ってくるのが速くて、動きも唐突で、その場の全員が反応できなかった。

頬に一撃...

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