第95章

葉夜視点:

妃那が俺に向かって手を伸ばしてきた瞬間、思わず動きが止まった。

こんなにも長いあいだ、自分の足で立つことに慣れきっていた。もうとっくに、誰かの手なんか必要としないところまで来ているはずなのに。

それでもなお、俺の力を知り尽くしているくせに、本能みたいに迷いなく手を差し出してくる――そんな人間は、妃那が初めてだ。

愛されるって、こんなに幸福なことだったのか。

ぬるま湯に全身を沈められたみたいに、身体の隅々まで温度が行き渡って、心臓までふやけてしまいそうになる。

彼女の細い腕に、ほんのわずかな力を預けてヘリの機体へと身体を引き上げる。

ちょうどそのときだ。

すぐ真下に...

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