第7章

あの日以来、中村正樹は初対面の頃のような沈黙に戻ってしまった。

隣の席に座る彼は、ノートの上でペン先を素早く走らせているものの、一度もこちらを見ようとしない。

私はたまらず、鉛筆の先で彼の腕を軽くつついた。

彼はすぐさま振り向き、その瞳に一瞬光が宿ったが、すぐにまた翳ってしまった。

その瞬間的な反応は、実家の柴犬『小太郎』を思い出させた。いつも私の足音を聞きつけると、耳をぴんと立て、期待の光を目にきらきらさせるのだ。

「正樹」

私は小声で言った。

「この件がすごく変なことだって分かってる。でも、あなたのせいじゃない」

彼の視線は教科書に固定されたままで、まるで私...

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