第129章

病室の空気が、ぴたりと固まった。

宮原知子は拳を握りしめ、指先が白くなる。胸の奥に押し込めてきた苛立ちが、今にも噴き出しそうだった。

ベッドの上で「当然だろ」とでも言いたげな顔をしている長川輝夫を見た瞬間、こめかみがずきずきと脈打つ。

長川輝夫は枕に背を預けていた。顔色は青白いのに、圧の強さだけは少しも衰えていない。

『俺が、おまえを助けて負った怪我だからだ』

「……あなた!」

宮原知子は言い返しかけて、喉の奥で言葉が詰まった。理屈の上では、彼に分がある。

長川輝夫は面白がるように口角をつり上げ、瞳に強引な光を宿す。

『俺が飛び込まなきゃ、今ここで寝て、後始末を待ってたのはお...

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