第143章

これ以上ぐずぐずしていたら、危ないのは自分だ。

長いあいだ迷って、悩んで――それでも彼女は、震える指で見慣れた番号を押した。

コールは二度。すぐに繋がる。

男の低く冷たい声が耳に落ちた。

『……もしもし』

『わ、私……』宮原知子の声はかすかに揺れていた。寒さのせいなのか、胸の内がぐちゃぐちゃだからなのか、自分でもわからない。『車が郊外の山道で動かなくなって……携帯も電池がなくて。お願い、迎えに――』

言い終える前に、通話が切れた。

受話器の向こうに残ったのは、つう、つう、という無機質な音だけ。

宮原知子はその場で固まる。

……切った? 今、切ったの?

ふっと、頬に苦い笑み...

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