第146章

長川奥様の顔から、さっきまでの穏やかさがすうっと消えた。そんな話が出てくるとは、想定していなかったのだろう。

奥様の表情が曇ったのを見て、鈴野雫は胸の内でほくそ笑んだ。

『直志はまだ若くて、気持ちもまっすぐで……あの女に利用されてるんじゃないかって』

そこまで言うと、雫は目尻を赤くして、いかにも悔しそうに唇を噛む。

『おばさん、わたし、わざと陰で悪口を言いたいわけじゃないの。ただ、輝夫お兄さんと直志が心配で……でも輝夫お兄さんの前で言いすぎたら、嫌われちゃうかもしれないって思って……』

長川奥様は目を細めた。

『あの女に、そこまでの手腕があるの?』

若い頃から上流の世界に身を置...

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